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【介護】税金が年間49万円節約事例も!介護費用と税金を抑える方法を教えます

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皆さんの人生を豊かにするお手伝いをしています
おかねの相談室 ファイナンシャルプランナーの氏家です。

皆さんの中で介護によって金銭的負担が大きくなり、「介護費用を抑えることはできないか?」「税金を安くすることはできないか?」と思われている方も多いのではないでしょうか?一度始まるとなかなか先が見えないのが介護といわれ、お金のことを考えると心配は募るばかりですよね。

そこで今回は、介護で使える税金見直しポイントと公的制度を活かした介護費用を抑える方法をお伝えします。介護費用の負担で悩んでいる人、親や自身の介護に関心がある人はぜひ読んでみてください。




介護期間と介護費用

介護期間の平均は4年7ヵ月

介護期間は平均で4年7ヵ月と言われています。しかし、なかには10年以上も介護期間になっているケースもあるため、介護期間は人によって状況は様々であると考えたほうがよいですね。
★介護期間の平均609.png
<生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/平成30年度>



介護費用の平均は7.8万円/月

下記に示すように、介護費用は月額平均で7.8万円/月、一時的な費用として平均で69万円といわれています。


<月額>
★介護費用の平均588.png

<一時的な費用の合計>
★一時的な費用の合計583.png
<生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/平成30年度>




介護費用を抑える税金対策

支出全体から考えたときに税金に注目しましょう。税金は何となくよく分からず払っているケースも多く、実は見直すことで支払っている税金を節約できたり、払い過ぎていた分を一部遡って還付を受けられる場合があります。具体的には子どもの所得を削って、税金を抑えた方が得なケースや、親の所得を削って対策をした方が得なケース等さまざまですが、自身に当てはまりそうなものは、できるだけ取り入れてみましょう。



介護費用の負担を減らすための税金見直しポイント!

①親を扶養に入れて扶養控除を受ける(同居していなくても可能)
②障害者控除をうける(障害者手帳が無くても可能なケースも)
➂社会保険料控除を所得が高い人にまとめて控除する(特別徴収から普通徴収へ)
④医療費控除も家族合算して所得が高い人にまとめて控除する
⑤申告漏れは5年以内の分は遡って申告できる



①親を扶養に入れて扶養控除を受ける(同居していなくても可能)

扶養控除には、「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2つがあります。ここで言っているのは「税制上の扶養」です。一般的に「扶養内」と言うと上記2つを混在させて考えられている方が多いのですが、制度としては別物です。所得が48万円(令和元年分以前は38万円)以下であれば、扶養の所得要件を満たします。

※税制上の扶養控除・・・所得税や住民税の控除や、配偶者控除・配偶者特別控除に関するもの
※社会保険上の扶養控除・・・健康保険や年金に関するもの

別居の親でも入れられる扶養控除
「同居していないと扶養に入れられない」「別居の義理の親(配偶者の親)は扶養に入れられない」など誤解している方がいますが、これは健康保険上であって、税法上は可能です。
皆さんのなかで親に介護費用や生活費などの仕送りをしている人は、扶養控除の申告をお勧めします。



②障害者控除をうける(障害者手帳が無くても可能なケースも)

障害者控除とは、障がいがある本人や障がいがある家族と同じ生計で暮らしている場合に控除できる制度です。
障害者控除については、要介護認定を受けていても「障害者認定は受けていないから対象ではない」と思われがちですが、条件次第で申請可能です。もしも要介護認定を受けていれば、市区町村長による「障害者控除対象者認定書」により障害者控除の対象となる場合があります。障害者控除を受けられると、介護を受けている本人が課税者なら、本人の税金が安くなります。介護を受けている本人が非課税者なら、扶養している家族が障害者控除を申告することで家族の税金が安くなります。



③社会保険料控除を所得が高い人にまとめて控除する

社会保険料控除は所得が高い人にまとめて申告すると、税金対策として有効です。

※社会保険料控除とは
その年(1~12月)に支払った対象となる健康保険料(介護保険料は対象外)等などの社会保険料を所得から差し引く事ができます。家族の保険料を支払った分も対象となります。控除金額は、その年(1~12月)までに支払った保険料が全額控除となります。

つまり、親の健康保険料を代わりに納めてあげることによって、その保険料分を自分の社会保険料控除に加えることができます。

例えば、自身(子)は現役で働いており(年収500万円)、両親の健康保険料25万円を代わりに支払った場合は、25万円全額を申告することが可能です。全額が所得控除となり、年間約5万円(親に収入がない場合)の税負担を抑えることができます。

子どもの国民年金保険料を親が納めた場合も該当します。

また、介護している親を社会保険上の扶養にすることにより、社会保険料の負担を減らす方法もあります。(下記で解説しています)



④医療費控除も家族合算して所得が高い人にまとめて控除する

医療費控除は、本人だけではなく家族分の医療費をまとめて申告する事ができます。所得が高い人ほど税率が高くなるので、所得が高い方で申告した方が有利な制度です。下記の介護サービス費用も対象になるケースがあります。(介護にかかった費用を自身(子)で払った場合に限ります)

※医療費控除とは
自身と家族が支払った医療費を所定の条件によって所得から控除できます。介護費用も医療費控除として合算できます。

<条件>
対象となる医療費や介護サービス費の合計が10万円以上超えた場合に、所定の計算式により求められた控除額が所得から控除されます。総所得が200万円未満の人は、10万円を超えていなくても申告が可能です。

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<福祉系サービスの具体例>
訪問介護(ホームヘルプ)、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)、小規模多機能型居宅介護など

<医療系サービスの具体例>
訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーション(デイケア)、短期入所療養介護(医療施設でのショートステイ)など

※医療系のサービスは、基本的にすべて医療費控除の対象となります。福祉系のサービスは、原則として医療費控除の対象となりませんが、医療系のサービスと組み合わせて利用している場合は、医療費控除の対象となります。



⑤申告漏れは5年以内の分は遡って申告できる

上記4つの税金対策について紹介してきましたが、知らなかった方は今から5年以内であれば遡って申告可能です。例えば、親の介護で仕送りをしていて、同居していないために、扶養に入れる事が出来ないと思って申告していなかった人も、最大5年分遡って申告が可能となります。申告されていない方は、手間暇かかりますが、遡って確定申告をすることをお勧めします。




介護費用の負担を抑える対策

介護費用を直接抑えるために、先ほどの税金以上に効果がある5つの方法をご紹介します。



公的制度を活かした介護費用を抑える方法

⑥介護の親と世帯を分ける(世帯分離)
⑦障害認定を受けることで、介護費用や税金を減らす
⑧現役世代の子供が親を社会保険の扶養にいれることで、親の健康保険料を抑える。(同居していなくても可能)
⑨高額介護合算療養費制度で自己負担額を抑える
⑩補助金も活用し介護費用を抑える



➅介護の親と世帯を分ける(世帯分離)ことで介護費用を抑える

・住民税非課税世帯にすることにより介護費用の上限額を下げられる
親子で同じ世帯にしている家族が、世帯分離(住民票に登録されている一つの世帯を、二つ以上の世帯に分けること)によって、両親が非課税世帯になると介護費用を抑える事ができます。

<例>
分離前:①(親夫婦+息子夫婦) ➡ 分離後:①(親夫婦)/②(息子夫婦)
分離前:①(父+子+子) ➡ 分離後:①(父+子)/②(子)


※非課税世帯とは
<単身者世帯の場合>
所得が年38万円以下(65歳以上の場合:年金収入で148万円以下 65歳未満の場合:年金収入で98万円以下)

<夫婦世帯(配偶者控除あり)の場合>
所得が年83万円以下(65歳以上の場合:年金収入で193万円以下 65歳未満の場合:年金収入で147万3334円以下)

※上記は栃木市の場合。詳しくはお住まいの自治体ホームページ等でご確認ください。


さらに、非課税世帯かつ預貯金等の金融資産が500~650万円以下(夫婦の場合は1500万~1650万円以下)であれば、介護保険負担限度額認定を受けられるため、直接的に介護費用を抑える事ができます。

※介護保険負担限度額認定とは
低所得者向けに特別養護老人ホーム(特養)やショートステイを利用する場合の居住費・食費の上限が定められる制度です。負担限度額の認定は所得や資産状況によって4段階に区分され、居住費と食費の負担限度額が異なります。
参考:厚生労働省ホームページ
参考:宇都宮市ホームページ



・世帯分離で親の介護費用の負担額の上限額を下げる
世帯を分けることで介護を受ける人の世帯所得が下がり、自己負担の上限額が下がるため、介護費用が抑えられます。そのため世帯分離することで高額介護サービス費の自己負担額が下がる可能性があります。

※高額介護サービス費とは
一か月に支払った介護サービス費が世帯所得の金額に応じて自己負担の上限額が決められており、上限を超えた分は払い戻されます。

例えば、子供が現役並みの所得がある場合、親子で世帯を分離する事により、負担の上限額が月額44,400円から15,000円になることもあります。(令和3年8月1日利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されました)
負担の上限額.png



⑦障害認定を受けることで介護費用や税金を減らす

上記でも説明しましたが、障害者控除対象認定を受けると、本人又は子供(親の生活費等を援助している場合)が障害者控除を受けられます。

障害者控除の金額は下記のとおりです。
障害者控除の金額596.png
※「障がい者」と「特別障がい者」の違いは国税庁ホームページを参照

介護状態になったら、市町村へ障害者控除対象認定の申請をする事をお勧めします。



➇現役世代の子供が親を社会保険の扶養にいれることで、親の健康保険の負担を抑える(同居していなくても可能)

意外と知られていないかもしれませんが、両親や家族を社会保険上の扶養に入れる場合で、60歳以上の方は年収180万円未満であれば可能です。(一般的に年収130万円以内と思われている方が多いです)

現役世代で親を介護している場合は、条件を満たせば扶養に入れることにより、両親の健康保険の負担を減らすことが可能です。ただし、扶養に入れることでデメリットになるケースもあるため、一度専門家に相談することをお勧めします。



⑨高額介護合算療養費制度で自己負担額を抑える

高額介護合算療養費制度を利用すると、ご両親の介護費と医療費を抑える事ができるケースもあります。

※高額介護合算療養費制度とは
毎年8月から1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担を合計し、高額(世帯で合算して)になる場合に、負担を軽減してもらえる制度です。医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、自己負担限度額の上限を超えた場合に、超えた金額が支給されます。



⑩補助金も活用し介護費用を抑える

在宅介護で、上手く歩けなくなったり・寝たきりになった場合には住む家をリフォームしたり、介護用ベッドを買ったりなどいろいろと費用がかかります。介護する方への負担をなるべく減らす目的で、国や市区町村でも補助金制度があるので、該当する場合は申請しましょう。
参考:宇都宮市ホームページ


・家族介護慰労金
在宅で重度の介護を要する高齢者を常に介護している方に家族介護慰労金を支給します。年額12万円。

・高齢者住宅の改造
65歳以上で、介護保険の要支援以上に該当する高齢者のいる世帯に、日常生活を容易にするための既存住宅の改修に要する経費の一部を補助。




まとめ

いかがでしたか?介護は身体的だけでなく金銭的にも負担がかかります。少しでも介護にかかる費用を抑えるため、今回解説した税金を抑える方法や公的制度をぜひ有効に活用しましょう。

自身でできない方、判断に迷う方は、介護制度にも詳しい「おかねの相談室」のファイナンシャルプランナーに相談することをお薦めします。


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